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2010年09月 アーカイブ

日本建築の見るべきところ 5

最後に、反対側の二畳台目の間。


ここでは、台目分だけが三重の棚になり、棚の袋を雲型の藍染め紙と銅の丸の中に七宝をおいた引手にしています。


また、白鳥の子張りの襖の引手は、花菱型です。


したがって、室の境では、花菱型と「の」の字型が裏と表になるのです。


さらに、この二畳台目の間で目立つ大桟の障子は、玄関の板の間に設けられた下地窓の反対側につくもので、障子そのものを内向きの桟ともども見せるという珍しいものです。


この一条恵観山荘では、書院造の要素を見出すことができません。


その意匠のほとんどは、数寄屋風です。


そればかりでなく、多くの新しい趣向を取り入れ、創りだしています。


中央の書院といわれる六畳の間から見た西あるいは東の二間つづきのたたずまいは、どう考えても書院造に間違えられることはないでしょう。


日本建築の見るべきところ 6

横浜三漢園に現存する、臨春閣。


慶安二年(1649)建立。


紀の川沿いに巌出御殿として営まれた別荘です。


当初は、現在の第一屋を中心に奥の両翼に第二屋と第三屋が展開し、第二屋が紀の川に張り出していました。


和歌山市から12㎞の巌出御殿は、参勤交代時の宿舎や別荘としての用途に用いられ、八代将軍吉宗も若き日を過ごしたと伝えられています。


わたしはこの三渓園によく訪れます。

火灯窓のスケッチ、黒柿の柾の選定、腰高障子や縁の下の連子型の図面など、いろいろなものを見てきました。


「この建築は、武家の桂離宮。桂離宮と並び称される時代が来る」と語られた言葉は、今もよく覚えています。


第二屋住の江の間の障壁画は、伝狩野山楽とされています。


淡い色付の風景は、いかにも数寄屋風で採用されそうな画題です。


次の間の画題は、現在の雁ではなく、はじめは桜で伝狩野永徳とされています。


しかし、三の間の琴棋書画図の筆者が狩野探幽であることや建立年代から考えて、この二間つづきの画の筆者は、再検討が必要でしょう。


いずれにしろ、帝鑑図のような書院造の一の間を飾る画題は、紀州侯の居室であるにもかかわらず採用されていません。


三の間と次の間の境の欄間は、額仕立にされた色紙を入れ、空いた部分を透彫りの菊の花で埋めています。


そして次の間から黒柿の柾分だけ上がった住之江の間では、腰障子の横桟が一本二本の繰り返しになり、その先の書院が縁に張り出さない平書院では波型の欄間が入ってきます。


床の間は畳床。


床柱は丸太、落掛は本と末を同一の太さにするために三本組み合せの丸太になっています。


棚には、縦丸型の引手のある天袋があり、下の地袋が朝鮮渡来の人物山水図で地板一枚という新趣向にしています。

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